「カーボンフットプリント」という言葉を聞いたことはあっても、人に説明をするのは難しい、という人は多いのではないでしょうか。
カーボンフットプリントとは、Carbon Footprint of Products(CFP)の略称で、直訳すると「炭素の足跡」ですが、商品やサービスの原材料調達から廃棄、リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組みです。
地球温暖化防止に向けた取り組みとして、国内だけでなく世界でも制度構築が進んでいますが、今や一つの商品のカーボンフットプリントが企業にとっては温暖化対策を生活者にアピールするための有効な手段であり、一方で生活者にとっては環境意識の高い事業者を選択する手段にもなっています。
この記事では、再生紙トイレットペーパーの6個パックについて、CFPの試算を行なった結果を報告した「トイレットペーパーのカーボンフットプリント(CFT)の試算ー富士市の家庭紙工場の例ー」より引用して紹介します。
CFPの商品種別の算定基準は、まだ決められていない
CFPの算出範囲は、(1)原材料調達段階、(2)生産段階、(3)流通・販売段階、(4)使用・維持管理段階、(5)廃棄・リサイクル段階の5段階にわけて行われました。ただし現状では、CFPの制度化にあたり、2008年に「低炭素社会づくり行動計画」が閣議決定され、同年には経済産業省にて「カーボンフットプリント制度の在り方(指針)」、「商品種別算定基準(PCR:Product Category Rule)」の取りまとめ作業が始まったものの、未だPCRの成立には至っていません。
単位も見慣れないものですが、再生紙やパルプといった原料の違いによってどのようにCFPが変化するのかなど、今後のさらなる研究結果に期待ができそうです。(以下引用)
“本研究では、静岡県富士市に位置する家庭紙向上で生産された再生紙トイレットペーパー6個パック製品について、CFPの試算を行なった。試算にあたっては、調査した工場で生産しているトイレットペーパー以外の製品の生産割合も考慮し、可能な限り1次データを使用し、それ以外についてはカーボンフットプリント制度商品種別算定基準(PCR)「紙・板紙」(PPR-025)に則って計算した。
その結果、2,406.9g-CO2eq/パックとの結果が得られた。トイレットペーパー1個あたりでは、包装・梱包資材を含めて401.15g-CO2eq/個となった。CO2排出量の段階毎の内訳は、原材料調達段階で140.63g-CO2eq/パック(構成比5.8%)、生産段階で1,824.57g-CO2eq/パック(75.8%)、流通・販売段階で329.13g-CO2eq/パック(13.7%)、廃棄・リサイクル段階で112.57g-CO2eq/パック(4.7%)となった。”
また、CFPを削減するためにできることは、生産段階における省エネの推進や再生可能エネルギーの導入が効果的であると示されています。(以下引用)
“CFPを削減するには、CO2排出割合が高い生産段階において、省エネの推進や原単位の低い再生可能エネルギーの導入など、エネルギー由来のCO2排出量の削減対策を行うことが効果的であると考えられる。例えば、風力発電等のグリーン電力証明書等により、発電原単位の少ない電力の導入などが考えられる。また、CFPの計算にあたっては、各種排水処理剤の原単位を整備する必要があること、さらにはPS(Paper Sludge、紙の汚れの発生)の具体的な処理法を想定したPCRを作る必要があること等の課題が明らかとなった。”
トイレットペーパーは誰にとっても身近な生活必需品であることから、CFPによって商品を選ぶような制度設計ができれば、他の日用品への普及も早いのではないでしょうか。そしてそのことは、カーボンオフセット(炭素の相殺)の普及に貢献できるだけでなく、毎日の暮らしとグローバルな地球環境問題との「つながりの断絶(ミッシング・リンク)」を解消する手立てにもなりそうです。