竹、藁、ケナフ、バガス…。「木材」ではない「非木材」の紙の原料には、どんな種類があるの?

竹、藁、ケナフ、バガス…。「木材」ではない「非木材」の紙の原料には、どんな種類があるの?

紙の原料は何?と聞かれたら、ほとんどの方が「木」と答えるのではないでしょうか。それもそのはず、現在流通するほとんどの紙は、木材からつくられています。

でも、昔、学校で配られていた「わら半紙」は「わら」が原料ですが、わらは、稲・小麦などイネ科植物の主に茎を乾燥させたもの。木ではないんですよね。同じように、繊維のある植物であれば紙をつくることは可能です。

今、木材を使わない「非木材紙」は、再生紙と並んで、森林資源保護の有効な手段として期待されています。そこで今回は、紙の起源と、非木材紙の種類についてまとめました。


紙の起源って?

そもそも紙は、木材でつくられていませんでした。紙のはじまりは、紀元前3000年頃に、エジプトでパピルス草の繊維を用いてつくられた「パピルス」であるとされています。

その後、中国で漢の時代に、麻を主原料にした紙が発明されました。そして以後も、竹やわら、楮(こうぞ)などが紙の主要な原料であった時代が長く続きます。ちなみに楮(こうぞ)は、和紙の原料です。他にも、みつまた、雁皮(がんぴ)の皮なども使われてきました。

いわゆる「木材紙」が生まれたのは、19世紀中頃。ドイツ人のフリードリッヒ・ゴットロープ・ケラー氏がパルプを人工的に製造する方法を発見して、砕木機を開発したことで、木材から繊維(パルプ)を大量に取れるようになったことがきっかけです。

ここから木材パルプを使用した、製紙工業の時代が始まったのです。


非木材紙の原料の種類は?

木材を使わない「非木材紙」の原料はいくつかありますが、まずご紹介したいのは、木材に代わる資源として有望とされている、ケナフとバガスです。

ケナフ

ケナフは、東南アジアやアフリカなどに生育するアオイ科ハイビスカス属の植物で、成長が早く、半年程度で収穫できることから、安定供給が可能な製紙原料として期待されています。

ケナフでつくられた紙は独特の風合いがあって、肌触り、柔らかさが秀逸。成長過程で地球温暖化の要因にもなっているCO2を吸収するという特徴もあり、すでに紙ナプキンなどに使われています。

バガス

バガスとは、さとうきびを搾った残りかすのこと。主な生育地はアジア、南米ですが、これまで、糖汁を搾った後の、かすの堅い部分は捨てられていました。

木材であれば、木を伐採して運搬し、製紙工場へ運ぶという運送コストがかかりますが、年ごとに収穫されるさとうきびの絞りかすが発生する場所に工場を置けば、運送コストもかからず、効率的に加工ができます。木材パルプより低温度・短時間、少量の薬品で紙にすることができるという性質を持つため、製造工程での環境負荷を抑えることができるようです。

バガスでつくられた紙は、しっかりとした質感があって、上質な雰囲気を感じさせます。

 

まだまだある、紙の原料

注目されているケナフとバガスから紹介をしましたが、他にも紙の原料となるものはたくさんあります。分類をすると、天然食物繊維と栽培植物繊維、そして農産廃棄繊維の3つに分けられます。

天然植物繊維

天然の植物繊維として紙の原料となるものには、竹、葦、エスパルト、海藻があります。海藻も、海の中の植物なのですね!上の写真は竹ですが、竹を紙とする歴史は古く、中国では唐の初めころから。薄いのに丈夫なため、書画などに用いられてきたようです。竹は、中越パルプ工業株式会社が「竹紙」として販売していますね。

葦も、東欧やアジアの一部の国で古くから紙として使われてきました。エスパルトはかたくて強く、北アフリカや南スペインが主な成育地です。

農産廃棄繊維

先ほどご紹介したバガスも、農産廃棄繊維のひとつです。他に、冒頭で例として出した麦わら・稲わらもこの種類。非木材パルプの中で最も多いのはわらとされていますが、古くは日本でも使われていました。

そして、食用や石鹸で使われるパーム油の原料であるパーム椰子も、その製造工程で捨てられる房の部分が、紙の資源として使われています。バナナの収穫後の幹も、パルプとして利用することができます。うっすらと黄色い紙になるようです。ミヤザワ株式会社が「バナナペーパー」を販売していますよ。

栽培植物繊維

先に出てきたケナフは、この栽培植物繊維です。木綿布を原料とするコットンや、手漉きわしの原料として利用されてきた楮(こうぞ)もこの種類。他にもロープや衣服の原料となるアバカは、繊維が強く、紙幣のための紙としても使われています。

ちなみに、非木材紙の他に、コーヒーかすを使った、アップサイクルの視点での紙も登場しています。コーヒーかすも繊維なのですね!そして上記のどの種類にも入りませんが、象のうんちには繊維がたくさんあることから、紙としての製品化もされています。

 

わら半紙はどこへ行ったのか?

昔、学校のプリントがわら半紙だったという方は、そういえばどうして見かけなくなったんだろうかと、不思議に思いませんか?

わら半紙はざら紙とも言いますが、消しゴムで消すと逆に黒く汚れたり、すぐに折り目が付いたりと、何かと「安価なもの」というイメージがあったと思います。安価で大量に印刷できることから、主に学校などで使われていました。

ところが、コピー機の導入、再生紙の製造技術が向上したことで使われる機会が減ってきたのだとか。値段を比べてみても、通常のコピー紙が2,500枚で約1,800円で手に入るのに対し、わら半紙は1,000枚で約3,000円と、確かに割高……。

そんな理由で、わら半紙は徐々に利用されなくなっているのですが、今、お菓子づくりの現場では、ほどよく水分を吸収する性質が、スポンジを焼くときの敷紙としてちょうどいいということで、見直されているのだそうです。

 

いかがでしたでしょうか。

これまで私たちは、紙の恩恵をだいぶ受けてきたように思います。これからは、森林保全の観点からも、紙の起源である「非木材紙」に、もう一度重要な役目を担ってもらう必要があるのではないでしょうか。